第3章:私がずっと思っていたこと(第2節)

初版2007年4月17日 第2版2008年7月18日 著者:草加床ノ間


完全先付けジェネレーションギャップ

 私が,麻雀をやり始めた頃のルールは「1飜しばりとフリテン以外の和了の制限」があった。やり始めた頃なので小学生だったということである。

 制限とは,全ての和了できる牌で1飜しばりを満たすことと,「原義の先付け(役に関係の無い副露を先にする)」なしというもの。

 まあ,小学生なので制限から外れた和了をすることもある。そうすると大体,同卓の大人に「あ〜,それは駄目だね」と見下されて言われたものだ。

 それでも頑張って本を読んだり,コンピュータ麻雀(当時は初代ファミコン)をしてレベルアップしたが,中学生の頃になると「なしなし」や「完全先付け」は麻雀のレベルを下げているのではと感じてきた。

 「なしなし」や「完全先付け」は「ありあり」に比べ安全牌が多くなること,黙テンに気を使わなくてもいい場面が多くなることに気付いてきたのだ。(※1)

 また,荒牌時の聴牌を認められるためにリーチしなければならないというのが非常に納得できなかった。

 「なしなし」や「完全先付け」を主張している私の周りの人は,初心者に嫌がられるという理由でレベルの高いルールと勘違いしているように見受けられた。

 また,手作りの重視も話題に出るが,こんなのは,本当に手作り重視ならドラを全部なくしてやってみればいいと言いたい。

 コンピュータゲームでも設定できれば本当にやってみて欲しい。身に染みて手作りが分かるはずだ。これで,物足りなさを感じたら,それはもう連荘機能付き以外のパチンコは打てなくなっているのと同じことである。

 それは手作りではなく役作りではないかという論もあろう。だが,そうすると手作りとは何ぞや。

 「なしなし」や「完全先付け」の手作りは,もちろん「なしなし」や「完全先付け」でなければできない。そうすると,手作りの重視とは単に「なしなし」や「完全先付け」そのものの重視を意味することになってしまうのではないか。

 ジェネレーションギャップと題したが,今の主流は「ありあり」だろう。

 「完全先付け」を採用している競技団体もないし(※2),コンピュータ麻雀でも最近は競技団体とのタイアップがほとんどで,ルールもそれに準じて「ありあり」が基本になってきている。

 「なしなし」や「完全先付け」と「ありあり」では,世代が分かれる感じになってしまっている。

 「ありあり」のほうが自由度が高いため,制約の多い「なしなし」や「完全先付け」の文化を持っている人から「ありあり」の和了を見ると,ちゃらちゃらしているようで気に入らないという,まさにジェネレーションギャップである。

 現代日本社会も,礼儀やしきたりなどの不文律に厳しかった「完全先付け」から段々と現実に即し自由に行動する「ありあり」になってきて久しい気がする。

 でも,結婚は「完全先付け」か。相手の確定という聴牌でも,「職」の確定,「家」の確定,「十分な時間」の確定がないと和了できない。和了できないうちに聴牌が崩れるかもしれない。

 余談だが,少子化は子どもに対する手当ての制度の充実よりも,結婚が「完全先付け」から北欧のような「ありあり」にしないと解決できないのではないかと思ってしまうのである。


コンピュータ麻雀について

 コンピュータ麻雀で腕を磨くのは,麻雀を強くなりたいと志した者なら誰もが試したことであろう。

 麻雀の基本的なルールを覚えるのにはコンピュータ麻雀はかなり適している。いくら待たせても不平を言うわけでもないし,点数計算の過程を表示してくれるものもある。

 しかし,実戦での力をコンピュータ麻雀で得るのは厳しいと言わざるを得ない。

 コンピュータの思考ルーチンが格段によくなってきたとはいえ,それは手作りに関してであり,別の部分は今ひとつの感が否めない。(※3)

 例えば,あからさまに混一色を狙い聴牌しているのに,それを無視するかのように危険牌をどんどん捨ててきたり,ひどいのになると三元牌を二種類副露しているのに,平気でもう一種類の生牌を捨ててきたりもする。

 また,一つでも上の順位になろうとする思考ルーチンは難しく,オーラスで最下位確定のごみ手を平気で和了する。

 そして,場の独特の雰囲気が全く無いし,当然ながらコンピュータには感情や顔色が無い。

 そこで私はたまに,極麻雀DXIIで理牌なし,制限時間3秒,CPU打牌4倍速でやっている。これがなかなか右脳が鍛えられる。

 まあ,それぐらい余裕な人もたくさんいらっしゃるかと思うが,制限時間3秒はカーソルの移動時間も含めるのでなかなか厳しい。

 いまや全自動卓は当たり前になってきて,中には配牌も出てくるのもある。それらは全て機械で行われるため,積み込みの不正介入を防いでいるという利点がある。

 ネットワーク麻雀も通信技術の発展とともに大きく発展してきた。ネットワーク麻雀なら全てがコンピュータで制御されソフトウェアがしっかりしていれば,不正や悶着の付け入る隙は無いのではと思ってしまう。

 しかし,ネットワーク麻雀の大会で観戦者が別の場所の参加者にケータイメールやチャットで情報を送るという,今ならではの不正もあるようだ。

 そして誰もが思うことであるが,麻雀をやるからには現物の牌を触りたいし,場の雰囲気がないと寂しいものである。

ネットワーク対戦型コンピュータ麻雀と実際の卓を囲む麻雀との比較

 ○ネットワーク対戦型コンピュータ麻雀のメリット

 1.チョンボになる操作を無効にすることで,チョンボの発生を皆無に出来る。つまり,わざとチョンボできない。(非常に大きいメリット)
 2.ルールを完全にコンピュータが管理するので,別卓とルールが違うということは無くなり完全統一できる。(大きいメリット)
 3.宣言の順序が完全に守られる。チーをわざと邪魔するポンはできない。ポンをキャンセルするまでチーが入力されていることが分からないからである。
 4.システム開発者と結託でもしない限り,一人ではイカサマはできない。
 5.先ヅモやリーチして他人の牌を覗く等の行儀の悪い行為は出来ない。口三味線や偽モーションも使えない。間違って牌山を崩すことも無い。
 6.スカートめくりや多牌少牌はあり得ない。
 7.得点のやり取り及び管理は100%の精度。コンピュータなんだから当たり前だけど。八連荘もコンピュータが管理なので採用可能。
 8.牌譜も自動で完璧。

 ○ネットワーク対戦型コンピュータ麻雀のディメリット

 1.ポン・チーの仕掛けに待ち時間を作ると,待ち時間のキャンセルにより相手の手牌の見当がついてしまう。(非常に大きいディメリット)
 2.場の雰囲気がなくなり,相手の仕草や表情といった人間的な判断要素がなくなる。(大きいディメリット)
 3.理牌の仕方が限られる。
 4.操作ミスの発生の可能性がある。(※4)
 5.ネットワーク障害が発生する可能性がある。
 6.全てが自動化されるので,自分で点数計算できない人や,嶺上牌のツモり方が分からない人が出てくるかも知れない。


(※1)「なしなし」「完全先付け」「ありあり」の定義は非常に難しいが,ここでは厳密にする必要も無いと思うので,これらの言葉をそのまま使った。

(※2)Wikipediaによる。私も調べたが,まともにルールを公式サイトに載せているのが日本プロ麻雀連盟ぐらいしか見つからなかった。もしかして,ネットサーフィン能力が無いのか私は。

(※3)昔の2人打ちなんか,コンピュータの手は最初から決まっていて,何巡目にツモ和了するかも決まっていた。捨て牌と副露は完全演出だった。初代ファミコンの初代麻雀はそれである。そして,ハドソンソフトから手作りの思考が入った4人打ち麻雀が登場し,業界を驚かせたという・・・らしい。

(※4)プロ将棋にもネット利用の公式戦があり,2008年5月11日第2回大和証券杯ネット将棋・最強戦1回戦第2局で,当時の羽生二冠が操作ミスにより時間切れ負けとなった。実際の駒の操作をマウスに置き換えなければならないので,そこにミスが発生する要因が出来る。

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